高機能自閉症児における道徳判断と協力の関係

Li, J., Zhu, L., & Gummerum, M. (2014).
The relationship between moral judgment and cooperation in children with high-functioning autism.
Scientific Reports, 4.

この研究は高機能自閉症の子供の道徳判断と囚人のジレンマゲームにおける,異なる道徳性を持ったパートナーとの協力との関係を調査したものである.6-12 歳の高機能自閉症児 30 人と定型発達群の子供 31 人が実験に参加した.子供は,ストーリーの主人公の道徳性を判断した.道徳判断を正しく行った後,道徳的に良い子供および道徳的に悪い子供と繰り返しのある囚人のジレンマゲームを遊んだ.高機能自閉症と定型発達の子供は正しい道徳的判断を行った.あるいは,高機能自閉症の子供は何が道徳的に悪い行為を構成するかについてのより厳密な基準を持ってさえいるかもしれない.高機能自閉症の子供の協力行動は,交流するパートナーの道徳性に応じて変化することはなかったが,定型発達の子供は,交流する相手が道徳的に悪い子供の場合より,良い子供と場合のほうが,より高い協力を示した.したがって,パートナーの道徳性は,定型発達の子供の場合,後続する協力行動に影響を与えるが,高機能自閉症ではそのようなことがなかった.

自閉症における知覚学習:過剰な特異性と可能な治療法

Harris, H., Israeli, D., Minshew, N., Bonneh, Y., Heeger, D. J., Behrmann, M., & Sagi, D. (2015).
Perceptual learning in autism: over-specificity and possible remedies.
Nature Neuroscience, advance online publication.

柔軟性の欠けた行動は,自閉症スペクトラム障害のコアとなる特徴であるが,その基礎となる原因は分からない.我々は知覚学習プロトコルを用いて,ASD の当初は効率的な学習が,ターゲットの位置が変化すると異常な学習率の低さを見せる(過剰特異性)ことを観察した.刺激の反復を減らすことで,過剰特異性は消失した.我々の結果は,柔軟性の欠けた行動は,感覚学習においてすら見られ,ASD における普遍的なものかもしれないが,しかし,特別にデザインされた刺激プロトコルを用いることで克服可能かもしれないことを示唆する.

道徳と情動についての構成主義的レヴュー:道徳的内容と別個の情動との間の特定のリンクのついての証拠は存在しない

Cameron, C. D., Lindquist, K. A., & Gray, K. (2015).
A Constructionist Review of Morality and Emotions: No Evidence for Specific Links Between Moral Content and Discrete Emotions.
Personality and Social Psychology Review, 19(4), 371–394.

道徳と情動は結びついているが,その対応の本性とはどのようなものだろうか? 多くの「自然数的」説明は,道徳的内容と別個の情動との間の特定の対応を仮定する.たとえば,危害は怒りに結びついており,清潔さは嫌悪と結びついているといった類だ.この文献レヴューはこうした特定のリンクを支持する証拠が少ないことを示す.さらに,一見した特定性は,感情と概念的内容のような,道徳と情動の間で共有された大域的な特性から生じるものかもしれない.こうした発見は,道徳と情動の基盤をなす個別的で領域特定心的メカニズムを数えることに対して反論する構成論的な心の観点に整合的である.対照的に,構成論は,コアとなる情動や概念化のような基礎的で領域一般的な構成要素が,道徳判断と別個の情動の経験を創造するうえで,柔軟に結びつくことを強調する.道徳心理学における構成主義が含意するものについて議論し,道徳と情動とのリンクを綿密にテストするための実験の枠組みを提唱する.

上側頭溝 STS における社会的知覚/認知の機能的構成

Deen, B., Koldewyn, K., Kanwisher, N., & Saxe, R. (2015).
Functional organization of social perception and cognition in the superior temporal sulcus.
Cerebral Cortex, bhv111.

上側頭溝 STS は,顔や人間の運動の知覚や,他者の行為,心的状態,言語の理解などを含む社会知覚・認知のハブとしてみなされている.しかし,STS の機能的構成についてはまだ議論が多い.それぞれ異なるプロセスに特化した機能的に異なる多くのモジュールから構成されている広い領域なのか,あるいは,多重のプロセスに関わる多機能的な領域なのか? STS は空間的に構成されているのか,もしそうなら,その構成の基本となる特性はなんなのか? 我々は fMRI を用いて,人間の被験者の同一の集団において,さまざまな社会的・言語的刺激への STS の反応を測定した.その結果,前後軸に沿って構成された,ある種の社会的入力に選択的に反応する多くの STS の下位領域を発見した.多くの対比に対して重なりあう反応を示す領域も特定した.たとえば,言語と心の理論の両方に反応する領域であったり,顔と声,あるいは,顔と生物学的モーションの両方に反応する領域などである.したがって,人間の STS は比較的領域固有的な領域と,複数の社会情報に反応する領域の両方を含んでいるのである.

顔認知の遺伝的特異性

Shakeshaft, N. G., & Plomin, R. (2015).
Genetic specificity of face recognition.
Proceedings of the National Academy of Sciences, 201421881.

さまざまな領域における特定の認知能力は,典型的には,非常に遺伝率が高く,一般的認知能力 (g) と,表現型としても遺伝型としても,強く相関する.近年の双子研究によれば,顔を記憶し再認する能力は例外で,同様に遺伝はするのだが,表現型としては g とも一般的なオブジェクト認知ともほとんど相関しない.しかし,顔認知と他の能力(遺伝的な素因を共有する限りにおいて)遺伝的関係は,表現型における関連からは決定できない.この論文は,我々の知る限り,顔認知と他の領域との遺伝的関連を初めて研究したものである.2000 人の 18-19 歳の UK の双子が顔認知,オブジェクト認知,一般認知能力を検査するテストを行った.結果によれば,顔認知の相当の遺伝率 (61%) が確かめられ,多変量遺伝分析によって,こうした遺伝的影響のほとんどは固有のものであり,他の認知能力とは共有されていないことが明らかになった.

認知神経科学革命

Boone, W., & Piccinini, G. (2015).
The cognitive neuroscience revolution.
Synthese, 1–26.

表象と計算を取り込んだ多重レベル認知神経メカニズムの枠組みを概観する.認知神経科学における模範的な説明は,この枠組みに当てはまり,認知神経科学は伝統的な認知科学からの革命的なブレイクであると論じる.伝統的な認知科学は,機械論的な説明からは異なり,かつ,自律的であると想定されてきたが,認知神経科学的な説明は,認知を説明するために,有機体の複数のレベルに渡って,計算論的・表象的機能と構造とを統合しようとしている.かなりの範囲において,現場の認知神経科学者はこのシフトを既に受け入れているが,哲学理論はまだその重要性を十分に認め,受け入れていない.結果として,認知神経科学の基盤となる説明の枠組みはほとんど非明示的であり続けている.この枠組みを明確化し,過去のアプローチと比較する.

数知覚におけるトポロジーに基づく単位

He, L., Zhou, K., Zhou, T., He, S., & Chen, L. (2015).
Topology-defined units in numerosity perception.
Proceedings of the National Academy of Sciences, 201512408.

数覚仮説によれば,数とは,色やコントラスト,方位のように「根源的な視覚特性」であるとされる.しかし,いったいどのような刺激特性が根源的な視覚特性であり,数覚における数を規定しているのか? 数知覚における不変性を検証するために,提示の特性(方位,色,サイズ)を統制しながら,適当で不規則な形の中で繋がった/囲まれたアイテムの数を操作した.被験者は,さまざまな提示時間における少数・多数のアイテムについて識別,推定,等数判断課題を行った.結果は一貫して,繋がった/囲まれたアイテムは,ロバストな数の過小評価に繋がり,その数に対して短調増加する形で過小評価が生じるというものだった.対照的に,色の類似性に基づいたグルーピングは数の判断に影響を与えなかった.数,あるいは,数覚において数えられる根源的な単位はトポロジカルな不変項,たとえば結合性や外側/内側関係によって影響されると提唱する.行動指標に加え,頭頂間溝における数への神経チューニング・カーヴが fMRI 順応によって取得された.チューニング・カーヴは,頭頂間溝に表象された数はトポロジーに強く影響されることを示している.