脳機能イメージングにおける解剖学的記述の役割

やあやあ、みんなコメントくれてありがとう。結構な同意が得られてうれしいよ。同意得られたところをいくつか上げたあとで、議論のある点を論じるよ。まあこれらの記事がこれからのロードマップになってくれるとうれしいね。みんなが Passingham くんの言うとおり「解剖はつまらなくなんてない。大事なんだ」と思ってくれるとなによりだ。
「つまらん解剖を称賛しよう」という記事にみんなが突っ込みを入れて、それに返答した記事。

On the fundamental role of anatomy in functional imaging: Reply to commentaries on “In praise of tedious anatomy”
Devlin JT, Poldrack RA.
Neuroimage. 2007 Oct 1;37(4):1066-68

 
方法論の記述のガイドライン
「タライラッハ空間」とか「タライラッハ化」では一般的すぎてだめ。

  • どんな方法、テンプレートを使ったかしっかり書こう。
    • テンプレートによってだいぶ違いがあるよ

データベース化する際にも明示的な情報は不可欠

  • BrainMap project (Laird et al., 2005a)

タライラッハ空間を越えて:新たなスタンダード
タライラッハは確かに大きな役割を果たしたけど、今や MNI305 が事実上スタンダード

  • Toga and Thompson (2007) の言うように特定のグループごとの確率的アトラスがより正確で望ましいかも

非線形的変形がより正確に形を合わせることができ、個人間のばらつきも少ない(Van Essen and Dierker, 2007)

  • この正確さは諸刃の剣だけど。
    • 線形変形と非線形変形とを比較するとばらつく

細胞構築の役割
ここがいちばんやっかい
同意されているのは、もし機能イメージングで BA (Brodmann’s area) を記述しようとするなら、単にアトラスに従うだけでなく、他の何らかの基準に拠るべきだ

  • Amunts et al. (2007) によればマクロな構造は細胞構築の信頼できるガイドにはならない
  • Amunts らの確率的アトラスのアプローチが現時点ではベストかも。
    • 高磁場構造画像もいいね (Augustinack et al., 2005)

しかし、そもそも細胞構築って機能構成を見るのに役に立つの?

  • Amunts et al. (2007) は細胞構築は脳の機能を強く反映していると主張
  • けどシトクローム・オキシダーゼの blob と interblob が BA 17 内で機能的に分離しているよね (Livingstone and Hubel, 1984)
  • Passingham (2007) は細胞構築は結合的アナトミーの点から相同部位を確立するのに有効だと考えている。
  • 一方、Orban and Vanduffel (2007) はサルの fMRI がヒトの fMRI とサルの細胞構築とをリンクさせる上で重要だと考えている。

総合すると BA の記述はいらないし、望ましくないよ

  • 直截的な証拠がない限り BA は説得力ない
  • BA をもとに単純に先行研究と比較したらいかん
    • 比較がただしくなけりゃ意味がない
  • でも活動を多因子で記述するのは意味がある
    • 活動部位の解剖学的な記述 (皮質や皮質下の目印をもとに) は有効
    • 付加的な解剖学的、帰納的データがあればそれも書こうね

集団研究 vs. 個人研究
機能イメージングの研究はだいたいグループ研究だよね

  • 個人は random effect として扱うことによって…
    • 集団に共通した性質を見つける
    • 集団内での個人差を特徴づける
  • さらに個人の解析で出てくる偽陽性に対するセーフガードにもなる

グループ解析の結果はデータベース化にも大きな役割を果たす(e.g., Laird et al., 2005a; Nielsen et al., 2004; Van Horn et al., 2001)
データベース化は新たな発見をもたらすかも

グループ解析も大事だけど一部では個人の機能-解剖の細かい分析も増えてきたよ (Fadiga, 2007; Orban and Vanduffel, 2007; Tzourio-Mazoyer et al., 2007)

  • 低次の視覚研究ではこれが む し ろ 規範
  • こういった場合、活動領域は座標ではなく、機能的ローカライザーを使って定義される
    • V1 は網膜部位再現とか紡錘状回の顔選択領域
  • 高磁場の fMRI が増えたら、個人研究ももっと増えるかもね

結論
まあ、だいたいみんなの突っ込みには同意するよ
解剖はただの場所じゃない、ってのも重要だ

  • 解剖は脳機能の多くの側面にかかわっている (e.g., Leonard et al., 2006)

解剖のきちんとしたレポートはすげー重要なのに、いまいち正当に評価されていないんだよな
もっとみんな考えてよ